はじめてお話しするお客様(クライアント様)に対して、アンケートをお願いしたり、いろんな質問をさせていただいて、インタビュー(ヒアリング)を行うことがあります。
多くの場合、そのアンケートやインタビューは、会社やお店の設立経緯から沿革、会社のビジョンや経営目標からはじまって、会社規模、社内体制のこと、競合企業のこと、顧客のこと、商品のこと、プロモーション(販促方法)などのことをお伺いします。
お伺いしたアンケートの結果を分析して、私はクライアント様への支援方針やアドバイス内容を検討するわけですが、もちろんここではアンケートに対して「お応えいただいた内容」を重視します。
もうひとつ、気になる点があります。それは「記述量」です。
たとえばアンケートシートをお渡しした場合、ある項目には何も記入がなかったり、素っ気ないお応えが記入されているのに対して、別の項目には記入欄から溢れ出るくらいにビッシリと回答があったりします。
ここから、お応えいただいた人の持っている「こだわり」を推し量ることができます。
たとえば、商品に関する欄にびっしりと記入がある場合、自社の商品(製品)に自信があったり、逆に悩んでいたりして、商品を「開発」して「売る」ことにこだわっているという、生産志向や販売志向(いわゆるプロダクトアウト型)の考え方が表れているように思います。職人的な印象です。
競合企業のことに関して多く語られている場合は、「競争志向」、お客様に関する記述が多い場合は「顧客志向」といったところでしょうか。
どれがよくて、どれが悪い、というわけではありません。
それに「お客様に関する記述が多い」からといって、本当に「お客様の方向を向いているのか」というのは、また別問題です。
経営者の関心が、どちらにより多く向いているか、ということです。
そして、私がアドバイスを申し上げる上で細心の注意を払うのは、クライアント様の関心の薄い部分、つまりアンケートで「記述のなかった部分」や「記述の少ない部分」です。
たとえば「競合他社」への関心が薄い企業があるとします。
よく言えば「独自路線」であり、「独立独歩」の企業と言えます。一見すると、骨太の方針のように見えます。
しかし、多くの、特に有名な「独自路線企業」というものは、本当に競合企業に関心が無いわけではなく、
お客様から見て、競合の動向に関心がないように見える企業
ということです。
もっと言えば
他社の動向には関心が無いように見せている
ということです。
本当に競合に対する興味をなくしてしまった場合、ある日気がついたら、競合企業に大きく差をつけられていた。なんてことにもなりかねません。
つまり「独自路線企業」とは「競合企業に興味が無い」という企業ではない、ということなのです。
他の企業がマネできない製品を持っていたとしても、それが利益を生むのであれば、きっとどこかの企業(国内や同業者、類似製品とは限りません)が追随してくるはずです。他社への関心を失ってしまうと、他業種からの参入や追随に気がつきにくくなってしまいます。
何かへの関心が薄いと、そこから問題点が発生する可能性が高くなる、とも言えます。
売上が多く上がっているので、財務的な内容は「きっと大丈夫だろう」と思っていたら、実は大赤字だった、なんて話は、冗談のようですが、中小企業には実際によくある話です。
中小企業はお金や人材など、限られた資源で戦わなくてはいけないので「何に注力するか」というのはとても大事なことですが、「今注力していないこと」は「本当に注力しなくてもよいのか」ということを考えてみる必要があるように思います。
何かに注力するということは、別の何かには注力しないということであり、限られた資源で戦う中小企業には、ある程度やむをえません。
しかし「注力しない点」から、問題点が発生する危険性があります。
注力しない=関心を持たない
という図式になってしまうと、その危険性はさらに高まるように思うのです。
会社にとっての重要事項を網羅した「アンケートシート」をご自身で作ってみて、ご自身で答えてみて、第三者の目でその回答を眺めてみたり、経営者同士の集まりなどでお互いに評価する、などという方法が有効かもしれませんね。